「世界史のなかの日本史」(半藤一利)

 昭和の日をまたいで読むことになった「世界史のなかの日本史」。著者の半藤一利に昭和を語らせたら右に出る者はいないであろう。

 スターリンヒトラー。この二人の非人間的で極悪な指導者が、二十世紀の世界歴史上にわずかに姿を示してきたのは、ほとんど昭和の開幕と同じ頃であった。昭和の開幕と同時に凶暴な力に振り回されることとなった昭和日本。初めから昭和史の悲劇がこの本でも展開される。

 ちなみに、パリ不戦条約と日本国憲法9条の相関性を今年の憲法記念日当日に初めて知ったのは偶然の賜物か。非戦と戦争放棄。日独伊も締結したこの条約は昭和3年8月のことであった。

 ナチス・ドイツと同じ状況にあった太平洋戦争直前の「自主的な通報、密告のネットワーク」の脅威。戦争というものはそういう国民の協力があって推進される。それがいいことだと、思考を停止し、信じ込む。集団化された人びとは熱にうかれやすい。画一的で、異質を排除する不寛容な傾向を持ち、 ときには暴力性をはらむ。昨今の共謀罪という法律が、「核兵器アベノミクスも」と主張する人びとに想像以上に妙な力を与え、危機克服のためにナチス・ドイツと同じような道を日本人に選ばせるのでは、その時代を肌で感じた著書の感覚はわれわれが危機感を持って大事にしないといけないのではないだろうか。

 八月や六日九日十五日、驚くことにこの句を意味するところをわからない若者が増えているという。悲しい現実である。